[らーめんランド]

 

<店の概要>

はたして他にラーメン屋に行くのかどうか謎であるが、とりあえず「地獄ラーメン」を扱うラーメン屋の中でも日本で最も有名であると思われる。地獄ラーメンとは、文字通り地獄の血の池のように赤いスープに入った味噌ラーメンで、当然辛い。地獄のような外見と辛さを備えた、まさに文字通りの地獄ラーメンなのである。また、この店は地獄ラーメンばかりクローズアップされるのだが、実は他に普通のラーメンも取り揃えており、しかもチャーシューを初めとしたさまざまなトッピングも用意されている。普通のラーメンは、それはそれでけっこうおいしいという。今度一回普通のラーメンを食べてみたい

<激辛道>

何と言っても地獄ラーメンである。地獄ラーメンは0.5丁目からあり、メニューには50丁目まで載っている。当然ながら数字が大きくなるほど比例的に辛さが増す。4丁目まで750円で、それより上は900円。ただし、5丁目以降は完食すると御褒美にアイスが出てくる上、敢闘賞として証明書が店内に張り出される。辛いものを食べて誉めてくれるところはここくらいしかないので、ぜひ挑戦したい。ちなみにアイスは単独で注文すると150円4丁目までと5丁目からの値段の差も150円。この辺の微妙な関係がいろいろ突込みどころ満載と言う感じだが、まぁいい。

私は最初はとりあえず、様子見と謙遜を含めた「5丁目」を注文した。これはまぁ、確かに辛いが、まだ戦えるレベル。次に来たときは、「10丁目」。うーん。まだいけるかな?そして、「20丁目」。辛い。だが、とりあえず「50丁目」は行かないと、俺の面子に関わる。そう思いながら、ついに先日、50丁目と対面した。

一口目のスープを隣でボンベイの赤とんぼを全部食べた友人に飲ませる。地獄を潜り抜けた経験のあるはずの友人が、「こりゃだめだろ」と言った。私も一口。「……だめかも」

などと、泣き言を言っている場合ではない。すでに地獄ラーメンの定義であるはずの「血のような赤」を放棄した、「そのまんま唐辛子色ちょっと茶色系」の鬼のような辛さのスープ(すでにスープと言うかシチュー状。唐辛子の入れ過ぎでどろどろしてる)につかっている、もはや掘り出さないとすがたが見えない麺をずるずるとすすりながら、私は来るべき本当の地獄へと進んでいくのであった。具がいろいろ残っていてバラエティに富んでいる地獄はまだ楽しい。本当の地獄はまさに不毛地帯となった暗黒の世界……

そう、地獄ラーメンの本当の怖さは「スープを全部飲まないと無効」というところにあるのだ。私が今まで地獄ラーメンに手を出さなかった理由はまさにここにある。麺が残っているうちはまだいい。麺がなくなると、ただひたすら辛いだけのゲル状の液体との一騎打ちが始ってしまうのだ。そのつらさは想像を絶する。中学校のマラソン大会にたとえるならば、麺及び具を全て食べてしまうまではまだトラックを走っていると考えても良い。スープだけになってからが、トラックから校外に出て行くメインの部分なのだ。

ついに麺がなくなった。いよいよ本当の戦いだ。ただただスープをすくう。飲む。すくう。飲む。すくう。飲む。すくう。だんだん気が遠くなってくる。おなかが痛い気がするが、なかったことにする。だんだん辛くなくなってきた。ていうか味がしなくなってきた。やばいかも。

しかし何だかんだいっても、結局俺の敵ではなかった。ほぼ無意識状態の俺の目の前には空っぽのどんぶり。そして、50丁目の証明書。カレーと違って、水を飲んでもダメージが変わらないというのはメリットなのかデメリットなのか。いずれにしろ俺の勝ちだ。ブルーベリージャムのかかったアイス(10丁目までにはなかった気がする)を食べながら、勝利の余韻に浸る私だった。

  

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