[インディー28]

 

<店の概要>

 千代田線から接続している常磐線の普通電車の先にある、南柏と言う駅の近くに、インディー28はある。カレー屋なのだが、何故かスパゲティの種類が豊富で、ミート、ジャーマン、たらこ、カルボナーラなどがある。また、サンドイッチなども多数取り揃えており、喫茶店のような雰囲気もある。閉店は11時過ぎと遅くまで営業しており、夜の仕事の帰りなどにもってこいのカレー屋である。

 この店では驚くべき事に、カレーだけでなくスパゲティの辛さも選択できる。辛さの選択を始めたとたん、この店のスパゲティはすべてカレースパゲティとなる。結構美味しいので、一度試してみて欲しい。

 なお、店の名前「インディー28」は、「28種類の現地からの香辛料を使用し、28時間以上かけて作り上げる本格的なインドカレーの店」というところから来ているそうだ。しかし、以上という事は多分28時間ではない。そりゃ、100時間かけても28以上だが、なんかこじつけっぽい気がする。

 ここの店のおばちゃんはすごくいい人。でも値段はこの辺にしては全体的に高め。

<カレーについて>

 この店のカレーは、スープ状。他のどの店にも負けないくらい水気の多いカレーで、一粒一粒の強調された固めのサフランライスとよく合う。基本となる「インディーカレー」には、具は入っておらず、チキンやポーク、ビーフカレーなどを注文すると、カレー自体もそれに合うようにアレンジしてくれるらしい。

 インディーのカレーは、最初ははっきり言ってそんなに美味しく感じないかもしれない。ここのカレーは奥が深く、初心者には厳しい。しかし、通えば通うほどその素晴らしさに惹きこまれてゆき、3回も行けば、中毒化が始まる。最終的には週に一度はインディーのカレーを食べないと調子が悪いくらいになってしまう。独特のサラサラカレーは、さっぱりしていて体調の悪い時でもすっと体に入り、あたかも「インドのお茶漬け」のような印象を受ける。

 また、ドライカレーというメニューがある。ここのドライカレーは、いわゆるカレーピラフではない。サフランライスの上に乗ったペースト状のひき肉カレー。インディーカレーが合わない人にも、これはかなりおすすめ。かなり美味しい。他にも、カレードリアや独特の味のカレーピラフなどがあり、バラエティーに富んでいる。

 ありゃ、なんか真面目な解説になっちまった。

<激辛道>

 メニューには、1倍を基準に、中辛、大辛、超大辛、超超大辛(8倍)などが載っており、挑戦者の戦闘意欲をかきたてる。だが、この店の真髄は超超大辛などとは程遠いところに有る。超大辛が8倍と言う事は、その先もあるはずだ。8倍でも十分に辛いのだが、激辛王を目指す身としては避けて通るわけには行かない。というわけで、その先に挑戦。とりあえず、100倍とか言うのは出来るのか。とりあえず、俺は食えるのか。というわけで、100倍に挑戦した。

 案の定、100倍カレーは存在した。基本的に、インディーのカレーはさらさらの水状、きれいな黄色をしているのだが、100倍ともなるとカレーは香辛料の多さからとろみが付き、唐辛子の匂いが漂う。また、色は既に真紅。真っ赤なカレーをサフランライスに載せて、いざ勝負!

 だが、100倍カレーも俺の敵ではなかった。数分の死闘の後に、100倍カレーは俺の前に屈服した。なかなか手強かったが、まだ美味しく食べられるレベルだ。修行僧の様に無欲に、俺はその先へと進む。

 次に挑んだのはなんと300倍カレー。あるのかよ、と思いきや、なんと600倍まで出来ると言う。なんなんだ。さすが、激辛道は奥の深い世界である。

 300倍カレーは、100倍カレーをさらに凌駕するドロドロの物体で、赤と言うか少し茶色がかっている。唐辛子系の匂いが鼻を付き、さすがに一口目の前には深呼吸が必要になる。果たして、食べきることはできるのか?

 さすがにこのレベルになると、汗をかくようになる。激辛好きと言うのは、有るレベルになると一定以下の辛さのものを食べても汗をかかなくなる。だが、一定以上のレベルには効果を失う。体中が熱くなり、額に汗を浮かべる。ドラクエの呪文「トヘロス」のようだが、実際そうなのだ。こうして苦戦を強いられるが、なんとか300倍カレーを制覇する。しかし……

 そう。俺には600倍カレーに挑まねばならないと言う新たな使命が生まれていた。それは、頂点を極めようとする者にとっての目の上のコブ。いわば、大豪院邪鬼にとっての江田島平八のようなものである。男塾を支配するには、なんとしてもこいつに勝たねばならない。

 というわけで、600倍カレーに挑戦。こいつは強敵である。店のおばちゃんもビックリだ。今まで数えるほどの人間しか、この600倍を制覇したものはいないという。それでも男には戦わねばならぬときがある。頼むぜ、おれの胃腸。

 そしてついに登場した。600倍カレー。もはや「ドロドロ」ではない。ドロドロと言うのは、物が解けている様子を言うのだ。今回は、「カチカチ」かもしれないし、「べっとり」かもしれない。もう一度言うが、この店のカレーは液状なのだ。それが、このカレーはなんと容器を横にしてもこぼれないのである。そして、色は限りなく黒に近い茶色。まさに、魔王の風格十分である。

 食べてみると、……………もう、味などわからない。わからないが、なにやら苦い。「苦辛い」というのが正直な感想。むちゃくちゃだ。しかし、実際、300倍ほど苦戦はしなかった。それほど、鍛えられていたのだ。初めて100倍を食べた時のレベルでは、とてもじゃないが太刀打ちできなかっただろう。だが、ボンベイであかとんぼを制覇した俺だ。十分600倍の魔王と戦えるだけの力はつけていたのだ。

 俺は、いつもより速いペースでカレーを食べ終わると、一息ついて氷がいっぱい入った水を飲み始めた。それは、サハラ砂漠のど真ん中で飲む水と同じ種類の、真に水に飢えたものだけが得られる、神の至福の恵みなのであった。

 

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