「バルセロナはスペインじゃないから」
政治の中心としての首都マ ドリードに対して、経済の中心としての華やかさをもっているのがバルセロナだ。イメージとしては中国の北京に対する上海、ロシアのモスクワに対するペテル ブルグのような感じだろうか。1992年のバルセロナ・オリンピックもあり、世界的な知名度も十分。
バルセロナを中心とするカタルーニャ地方はカスティーリャ王国とは起源が異なり、昔からスペインの支配に協力的ではなかった。アラゴンとくっついた後にアラゴン・カスティーリャ王国ができたが、文化的に完全に同化するのは難しかったようだ。
現在もスペイン語(=カスティーリャ語)ではなく9世紀頃から続くカタルーニャ語を共通語として使い、闘牛入場に年齢制限などの規制を加え、脱スペインを推し進めているようだ。早い話がスペイン嫌い、らしい。

さて、バルセロナの玄関口のサンツ駅に着いたのが朝9時過ぎで、予定よりやや早め。寝台列車では落ち着いて寝られず、朝から疲労。
とりあえずスーツケースを引きずって、ヘロヘロ状態で駅から数分のホテルへ向かう。12時までどうせチェックインはできないのだが、とにかくこの重い荷物を預かってもらわにゃいかんのだが。。
何とかホテルを発見し、向かう。その名もEXPOホテル。
バス停の前を通り抜け、ホテルの近くまで来ると…
ビチャッ
あん?
上から背中に何か降ってきた。
何か茶色というか黄土色というか。
えーと。。トリの糞……?
ウザイなぁ。。
そういうと昨日もグラナダで何か石が落ちてきたし。
そういう国なのか、スペイン。。
ともあれホテルが近くて良かった。。のかな。
何か見知らぬオッサンが背中を指さして何かついてるぞ、みたいなことを言ってくる。
機嫌が悪いので、あーあーそうだね、ぐらいの顔をしていそいそとホテルへ向かった。
スペイン、特にマドリードではソフトクリームを背中に付けて慌てているあいだに置き引きをするとか、色々悪い噂は聞いている。どうにもこの国は信用できん。
ホテルの前まで来て、この汚れた格好で中に入るのも何なのでカバンからティッシュを取り出してトリの糞を払っていくことにした。幸いホテルの窓が鏡になる。
結構広い範囲でついてるなぁ。。。
と思っていると、眼鏡の男がすれ違いざまに背中の汚物を指摘してきた。
いやもう、知ってるっちゅうに。。
何かスペイン語でペラペラ喋っているが、何だか分からない。
上着取って見てみろ、とかあさっての方を指さして何か言ってるが。。
とりあえず言っていることが分からないので適当に流すと、立ち去っていった。
それにしてもそんなに酷いのか。
Tシャツの上に羽織っている上着を脱いで汚れを落とし、ホテルに入る。
まぁ、こんぐらいなら大丈夫だろう。。
えーと、チェックインは。。
人が並んでるなぁ。。
……って、ん?
嫌な予感がした。
えーと。。。
カバンがねぇ!!
いや、小さいカバンは首からたすきがけにしてたから持ってないはずがないんだが。。
んー。
……あ、上着を脱いだときに。。。
確かにその瞬間はカバンを外す必要がある。
急いでさっきの場所へ戻るが、やはり後の祭。
カバンなど跡形もなかった。
いつの間に……
カバンを取ったときは、眼鏡の男も去った後。
周りには誰もいなかったはずだ。。が。。
……最初のヤツか。
トリの糞に見せかけた何かを俺にかけた後、そしらぬフリをして話しかけて来た男が、そのままこっそりついてきてたってことか…?
にしても、鮮やかすぎる。。。
まずいなぁ。
急いでホテルのロビーで荷物確認。
パスポート、ユーロとカード入りの財布、ホテルバウチャー、航空券、デジカメ、ガイドブックは残っている。
つまり、旅行を続ける上で特に困るものは盗られていない。
着替えやら何やらも、スーツケースの中だ。
盗られたのは…日本円用の財布と、DS、iPod…ぐらいか。
金額的には結構大きいが、カードさえ止めてしまえば致命的なものはない。
とりあえず、盗られた財布に入っていたクレジットカードを止めないとな。
ロビー内の公衆電話で、ガイドブックに記載されていた現地連絡先に電話。
すぐにカードを止めてもらう。大手のカード会社はこれが助かる。
さて、ホテルのチェックインはやっぱり12時までできないので、スーツケースだけ預けて観光に出ることにした。損失は大きいが、旅ができないワケじゃない。
バルセロナにいられる時間は少ないのだ。クヨクヨしても仕方ない。
多少身軽になってサンツ駅に戻った俺は、自販機で3日間乗り放題の地下鉄3-dayチケット(15ユーロぐらい?)を買ってバルセロナ最大の見所、サグラダ=ファミリアに向かった。